「ゴールデンスランバー」感想


確か「このミステリーがすごい!」で1位だった作品。
ミステリーという感じはあまりしませんでしたが、とても面白かったです。


現実にあったアメリカのケネディ暗殺事件をふまえつつ、
現実とはちょっと違う日本を舞台に描かれているこの作品。


第1部最後のインパクトはすごかったものの、
その後は「ただ起きたことの紹介」や「どうでもよさそうな話」が続いて、
少し退屈でしたが、半分を過ぎたあたりからとてもおもしろくなってきました。


ここまでつながることはねーよ、なんて思いつつも、この伏線回収には驚き。
ミステリーにおいて、どうでもよさそうな話が後で生きてくるというのはセオリーですが、
ここまで結びついてくるとすごいなあとしか。


あと、マスコミや世論などに対する捉え方も良かったですね。
ネットだと、「マスコミがいってることは・・・」みたいな意見をよく見かけますが、
本でここまで取り上げてるのって珍しいんじゃないかな。
(まあ、そういう難しい本をあまり読んでいないだけかもしれないけど)


「世の中の理不尽さ」というのかわからないけど、とても現実味がありましたよ。
ありえない話ではあるんだけど、主人公やその取り巻きにはとても共感させられました。


純粋にミステリーを楽しみたいという人にとってはちょっと物足りない感じで、
なんで「ミステリーがすごい」で選ばれたんだろうって面がないわけではないわけですが、
現実を踏まえた上でのこの設定や描き方はすごいものがあります。


とても良い、娯楽小説でした。


以下、ネタバレ注意

伏線回収について。

特に花火屋を手伝っていた件は、
マスコミに「ここで火薬の知識を学んでいたと思われます」と無理やり事件と結び付けられて
そこで終わりと思っていたのが、最後の最後で、花火を打ち上げる展開に結びつくとは。
ファストフードでの森田の話にまでつながるとは思いもよりませんで。


全部読み終わってから、第2部、第3部を読み返してみると、
退屈だった「登場人物のその後」といったものも新たな発見があって良かったです。
結局、最後まで分からないこともあるわけですが、すごくきれいな終わり方をしたなあと。


あとはアイドルが可愛かったり、浮気の話がロックだったりと、
随所におもしろい話が散りばめられてるのも良かったですなあ。