「School Heart’s―月と花火と約束と」感想

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とにかく、この構成はすごい。


俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の伏見つかさ先生と「死神のキョウ」の魁先生といった個人的にタイムリーな作家さんの競作。編集者さんがすごいのか、それぞれの作家さんがすごいのか、そのチームワークがすごいのか。


もともと、「競作」といっても、キャラクターを共有しているだけのものを想定していたし、それしか考えられなかったんです。なのになのに。なんだこれ。平気な顔して、同じ時間の中で、同じキャラクター達が、あちこち動き回ってるんですよ。4人の作家さんが書いているはずなのに、うまく伏線をはって、物語を絡めて。とってつけただけのような感じもしない。


1つ目のお話を読み終わって、次は女の子視点の話を読みたいと思ったら、思っていた通りになっちゃうし、「この女の子からしたらハッピーエンドだけど、この子としてはどうなのよ?」と思ったら、今度はその女の子のお話。最後の話はちょっとだけ他のストーリーとの関連性が薄まってるけど、それでも他の話に伏線がばっちりと。


帯の「多彩な恋のかたちがここにある!」ってのはまさにその通りで、5者5様な恋を味わえました。そして、本人から見た恋と、まわりから見た恋と。同じ恋を多方面からアプローチしているのは新鮮でもありましたね。同じ作家さんだといきなり視点をかえるのは難しいわけで、競作だからこそできるアプローチだったと思います。


表紙も樋上いたる先生で、原作が18禁ドラマCDという得体の知れないものときたら、買いですよ、買い。なーんてノリで買ってみましたが、これは普通に当たり。ドラマCDを聞いていない僕でも問題なく楽しめましたし。


多少、というかだいぶ狙った感もありますが、ここまでうまくまとめられちゃうと嫌な感じもしませんでした。ニヤニヤして、笑って、おもしろがって、最後は微笑むことができるような本でございます。